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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

高齢世帯平均2,003万円 金融資産、北陸など上位 持ち家率・貯蓄性向 影響

 世帯主が65歳以上の高齢者世帯の金融資産を47都道府県別に推計すると、全国平均は2,003万円で、奈良県や石川県など首都圏以外の自治体も上位に並んだ。総務省が5年ごとに実施する全国消費実態調査の家計収支に関する結果から算出した。貯蓄に積極的な土地柄や持ち家比率の高さが金融資産の形成にあらわれているようだ。  2014年の同調査に基づき、世帯主が無職で65歳以上の2人以上世帯の金融資産について、みずほ総合研究所の協力を得て日本経済新聞が推計した。金融資産には銀行の預金(ゆうちょ銀行を含む)、株式・投資信託などが含まれる。  最も高いのは東京都の2,689万円だった。年収が比較的高い会社員らが退職金を含めて資産形成しているとみられる。愛知県や神奈川県も同様だ。ただ、奈良県や石川県など、大都市以外の自治体も上位に並んだ。  奈良県は東京都に次ぐ2位となった。奈良県は株式と株式投資信託を保有する世帯の割合が全国でも有数の高さで知られている。  地元シンクタンク、南都経済研究所の太田宜志研究員は「県北西部を中心に戸建て住宅の並ぶベッドタウンが広がり、富裕層や大手企業に勤務していた団塊世代が移住した。退職後も資産を保有したまま住み続けていることも一因では」と分析する。  石川県が6位、富山県が10位と、北陸の自治体も上位に並んだ。  富山県は13年の住宅・土地統計調査での持ち家住宅率が79%で、全国で最も高かった。福井県を含めた北陸3県は共働き世帯の割合も高い。宮田慶一・日銀金沢支店長は「堅実な県民性に加えて、1世帯当たりの所得が全国的にみても高いことが、金融資産の押し上げにつながっているとみられる」と話す。  一方、最も少ない沖縄県は660万円だった。日銀那覇支店の調査によると、沖縄県は第3次産業の比率の高さや非正規雇用者の割合が高いことなどから、全国でも所得水準が低いと指摘。こうした状況が影響しているとみられる。  昭和女子大学の八代尚宏特命教授は金融資産の全国の単純平均額である約2,000万円については「富裕層に引っ張られている数字。個人差が大きく、平均値だけでは語れない」とみる。そのうえで「貯蓄の多寡がそのまま暮らしの豊かさ・貧しさを分けるわけではない」と強調する。  ただ、個人差が大きいとはいえ、現在の高齢者は高度経済成長期に資産を蓄えることができた面もある。人口減少と低成長が重なる現役世代は、金融資産形成の難しさが一層増す。  老後の蓄えはどの程度必要なのか。「老後資金の2,000万円不足」問題のように画一的な不足額で測るのではなく、個人差や地域差、世代差をきめ細かく分析する視点が欠かせない。

日経 2019年07月14日朝刊

 

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