NTTグループが膨大な不動産資産の有効活用に本腰を入れる。不動産部門を再編し、中核会社としてNTTアーバンソリューションズ(東京・千代田)を7月1日に発足。2025年までに最大1兆5千億円を投じ、電話局など約8,500拠点の活用法を探る。眠れる不動産で稼ぐ体制を目指す背景には、利益の6割をNTTドコモに頼る現状への危機感もある。
NTTは1日付で、持ち株会社の完全子会社としてNTTアーバンソリューションズを設立。傘下に不動産開発のNTT都市開発(同)とNTTファシリティーズ(東京・港)を置く。NTT西日本系の不動産運営会社にも49%出資し、不動産事業でグループの中核的な役割を担う。
NTTは全国に7千の電話局と1,500のオフィスビルを持つ。これまでそうした膨大な資産をうまく生かしきれていたとは言いがたい。
NTTの電話局は旧電電公社時代に地方都市の一等地に建てたものも多い。建て替え用に土地を広めに確保したものの、デジタル化などを背景に建て替えが不要になり遊ばせている土地も少なくない。NTT東西の再開発案件を、NTT都市開発以外のデベロッパーが受託するケースも目立った。
NTTの19年3月期の連結売上高は約12兆円、営業利益は1兆7千億円だった。うち不動産事業は売上高が4千億円、営業利益は300億円と全体の2〜3%。
一方、売上高の35%、営業利益の59%を稼ぎ出す携帯電話事業は、値下げや市場の成熟化など逆風下にある。
NTTの澤田純社長は18年6月の就任以降、「グループの資産を最大限活用して不動産分野を成長させる」と号令をかける。新会社を中心に25年までに1兆〜1兆5千億円を投資し、売上高を6千億円に増やす。
人口が減りライバルも多い日本の不動産市場で稼ぐ力を高めるのは容易ではない。「IT(情報技術)やエネルギーなどNTTの総力を結集する」。NTTアーバンソリューションズの社長に就いた中川裕氏は、グループの知見を生かした街づくりに活路を見いだす。
例えば仙台市では、NTT東日本のビルを解体し、最先端の産学連携拠点にする。物質の構造を原子レベルで分析できる「次世代放射光施設」を使う企業や研究者の拠点で、超高速の通信環境やセキュリティー、人工知能(AI)などNTTの先端技術を盛り込む。
85年の民営化以降、NTTはグループ各社が成長を追い求める一方、全体の力を発揮できないケースも目立った。不動産事業はNTTの「全体最適」を模索する澤田社長の再編策の試金石となる。
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