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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

銀行と貸金業界 信用情報を共有 21年度めど ローン残高や返済状況 過剰な個人融資抑制

 銀行業界はローンを過剰に借り入れた多重債務者を減らすため貸金業界との連携を強化する。2021年度にも借り手の信用情報について自己破産といった「事故情報」に加え、ローン残高や返済履歴を共有し、融資審査に利用する。事実上の融資抑制策となるが、銀行業界は収益性の高い個人向けのカードローン事業の健全性を高める方が重要だと判断した。  貸金業界とは対照的に個人への融資規制が緩かった銀行業界で、カードローンの審査が厳しくなりそうだ。  全国銀行協会が運営する信用情報機関の全国銀行個人信用情報センターが貸金業界系の日本信用情報機構(JICC)やシー・アイ・シー(CIC)と個人の信用情報を共有する。システム改修を経て、早ければ21年度にも実現する。  全銀協はすでに貸金業界系の2機関とカードローンの延滞や自己破産といった事故情報に加え、キャッシュカードの紛失情報を共有している。今回の連携で借入残高の情報を加えることで、銀行はローンを申し込んだ人が貸金会社からいくら借りているかを把握できる。収入に比べて過度な借金を抱え、多重債務者になりそうな人を事前につかんで、融資を断ることができる。  日銀によると銀行、信用金庫のカードローンは18年12月末で約1,049万件ある。貸金業界の無担保ローン情報が加わると、単純合算で約4,220万件の残高情報が照合できるようになり、多重債務を防ぐための情報の厚みが格段に増す。全銀協は現在、月次で更新しているカードローンの利用データを貸金業界と同じ日次に改め、共有情報を照合しやすくする。  消費者ローンを巡っては、多重債務問題を受けて10年に完全施行となった改正貸金業法で、貸金会社による融資を借り手の年収の3分の1までとする総量規制が導入された。その後、貸金業の融資は減り、3月時点で3件以上の借り入れた人は119万人超と10年度比で7割弱減った。  一方、銀行のカードローンは総量規制の対象から外れている。多重債務問題の「抜け穴」と批判されたこともあり、約8割の銀行が年収に見合って融資できる上限額を厳しくした。17年以降はカードローン広告の自粛も申し合わせた。  こうした対応で18年12月末の残高は約5兆7千億円と前年比で0.8%減り、8年ぶりに前年末の水準を下回った。ただ、残高は10年度比でなお約1.8倍の高い水準になっている。  全銀協が3月に公表した調査では銀行と貸金会社の両方を利用している人の約40%で、借入総額が年収の3分の1を超えていた。この比率は18年1月公表の前回調査から5ポイント上昇している。  全銀協は3月から「貸付自粛制度」も始めた。ギャンブル依存症や浪費癖があると個人信用情報センターに自主申告している人には、カードローンの申し込みがあっても融資しない仕組みだ。日本貸金業協会は同様の制度を導入済みで、全銀協か貸金業協会のいずれかに申請すれば自動で情報が共有される。  情報共有で分析可能な顧客データが増えれば、人工知能(AI)の活用によって、ローン審査の改善にも寄与する可能性もある。近年は利用者がスマートフォンなどで入力した個人情報から、AIが信用力を割り出して金利や融資額を決める手法が広がってきている。  銀行と貸金会社の情報共有が広がれば、審査の速度や正確性が向上する。 【個人信用情報機関】  個人向けローンの融資額や残高、返済や延滞状況といった信用情報を集め、会員が融資判断の際に参照できるようにする組織。銀行、消費者金融会社、クレジットカード会社、信販会社などの会員を対象に情報を収集・提供する。業態ごとの主に3つの機関がある。融資・与信審査の迅速化や過剰借り入れの防止を図るために欠かせない役割を担っている。

日経 2019年05月15日朝刊

 

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