不動産だよりロゴ

不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

農地集約 仲介役一元化 中間管理機構に TPP向け政府検討

 政府は22日、農地の賃貸を仲介して意欲のある生産者に集約する事業を、各地にある公的機関「農地中間管理機構(農地バンク)」に一元化する検討に入った。バンクと並行し、農協などが担ってきた別の集約事業は廃止する方向。環太平洋連携協定(TPP)発効や米国との関税協議を見据え、効率的な体制にして規模拡大を加速させる。  政府の規制改革推進会議が農地集約のための制度見直しを緊急に取り組む課題としており、年内にも一元化を提言する見通し。結論を受け農林水産省が作業に着手する。  農地バンクは、日本がTPP交渉に参加した後の2014年、各都道府県に設置された。耕作放棄地などを借り受け、区画の小さい農地をまとめ、必要な整備もした上で生産者に貸し付けている。日本の全耕地面積444万haのうち、17年度までに累計約18万5千haを機構が取り扱った。  一方、同様の目的で09年施行の改正農地法で創設されたのが「農地利用集積円滑化事業」。農協や市町村などで構成する団体が地主からの委任で農地の貸し付けや売買を手掛け、17年度実績は約1万8千haに上る。  ただ、これらの措置でも全耕作地の中で、大規模農家などの担い手が利用する面積の比率は55.2%にとどまり、23年に80%とする政府目標には遠い。農地バンクは円滑化事業より活用時の手続きが煩雑で、時間もかかるとの声があり、一元化に合わせて手続きの簡略化も検討する。  代々受け継いだ農地の賃貸にはなお抵抗感を持つ人が多い。関係者には「地域とつながりの強い農協だから所有者が応じている」との意見があるため、事業統合に5年程度の経過期間を設ける案も浮上している。 農地中間管理機構(農地バンク)  規模の小さい農地を借り受け、整備した上で大規模経営を目指す農家や企業に貸し出す組織。環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を契機に検討され、2013年に設置法が成立。14年から業務を始めた。各都道府県に置かれ、知事が役員を選ぶ。実務は、都道府県の農業公社などが指定を受けて担っている。国は機構の事業費を支援するほか、農地の貸し手などに協力金を交付している。 農業大国と競争備え 規模拡大に限界も  政府が農地集約を急ぐ背景には、関税を大胆に自由化する環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の発効が来年に近づき、海外産品との対抗を迫られている事情がある。広い農地で大型農機を使う姿にして価格競争力を高める考えだが、農業大国とは条件に差があり、規模拡大の効果には限界も浮かぶ。  農林水産省によると、牧草地などを含む農用地の面積は2014年、日 本が452万haだったのに対し、米国抜きのTPPに参加するオーストラリアは4億627万ha、EUは1億8,551万haに及ぶ。これから2国間の通商交渉に入る米国も4億820万haと桁違いに広い。  オーストラリアや米国はコメや麦、EUは乳製品などを安く供給できる一因となっている。国土の狭い日本が小さな区画の農地を集約しても、こうした国々と同等になるのは不可能な状況だ。  さらに日本は、全耕地面積の約4割が中山間地にあるというハンディも抱える。棚田のように山の斜面にある農地は集約や拡大ができない。打開するには農地集約に加え、先端機械の活用などによる生産性アップや品質向上を促すことが必要になっている。

静岡 2018年10月23日朝刊

 

Copyright (C) ADvance Forward Co.,Ltd. All Rights Reserved.