日本経済新聞社が実施した秋の「地域経済500調査」で、日銀の金融政策への要望を複数回答で聞いたところ「短期金利の上昇」と「長期金利の上昇容認」がいずれも5割に上った。短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する日銀の金融緩和策が続き、利ざやを稼ぎにくい経営環境が長期化している。債券価格下落による含み損懸念はあるが、多くの金融機関が政策変更を望んでいる実態が浮き彫りになった。
全国104の地域金融機関の経営者から回答を得た。日銀への要望を9つの選択肢から3つまで選ぶ質問では「景気」が83%で最多だった。企業倒産が増えれば貸倒引当金などの信用コストが重くなるため、景気の腰折れ回避を望む声が目立った。ほかに「株式相場(安定、急落の回避)」が29%、「為替相場(安定、急速な円高回避)」が24%だった。
特徴的だったのは短期金利の上昇を望む回答が49%に上ったことだ。一方の「現状維持、一層の引き下げ」は1%しかなく、多数の金融機関が金利上昇を求めていることがうかがえる。
日銀の操作対象である短期市場金利は本来、金融機関の預金金利よりも相応に高くなければ人件費などの経費を賄えないが、現状はマイナス圏だ。預金金利はゼロ以下にできない制約があるため逆ざや状態となり、金融機関の経営を圧迫している。
異次元緩和による金利の低下で企業が資金を調達しやすい環境は続いているが、北関東の地銀は「貸出金残高は増えても利回り低下による利息の減少を補えていない」と指摘する。「マイナス金利政策が長引くと預貸金利ざやが縮小し、金融仲介機能の発揮が困難になる」(九州の地銀)など、現行政策の長期化に反対する意見も目立った。
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