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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

新法施行1カ月 民泊手続き 簡素化課題 書類煩雑、断念の家主続出

 全国で民泊を解禁した住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行から1カ月。届け出手続きの煩雑さに批判が強まっているが、旅行者が家主と交流しながら安く長期滞在できるのは民泊ならではの魅力だ。2020年東京五輪・パラリンピックで訪日客の急増が見込まれる中、一層の普及が期待される。  「(訪問したのは)保健所4回、消防署2回、区役所1回、法務局1回。 平日にフレキシブルに動ける人以外は難しく、時間がかかる」。6月下旬に開かれた政府の規制改革推進会議。全国民泊同業組合連合会の日下太介理事は、東京都世田谷区に営業を届け出た家主の苦闘ぶりを紹介し、手続きの簡素化を訴えた。  提出書類の多さもネックだ。新法で定めているのは5〜11種類だが、世田谷区は地域の生活環境を守るため独自に必要書類を追加しており、18種類が必要だ。  他の自治体でも新法より厳しい条件を設けている例が多く、営業をあきらめた家主は少なくない。日下理事によると、五輪でセーリング会場になる神奈川県藤沢市でも、マンションの一室を提供し、ホテル不足の解消に貢献しようとしていた50代夫婦が届け出を断念した。  観光庁は7月9日に自治体担当者との会議を開き、提出書類を減らし、インターネットでの受け付けを拡大するよう呼び掛けた。  近年の訪日客増で東京都内のホテル稼働率が80%台に高まっていることを踏まえ、政府は五輪に向け「十分な宿泊施設の確保が必要」とする。だが今後どれほど増やせばよいのか、目安などは示していない。  みずほ総合研究所は17年9月のリポートで、東京都内にホテルの新築計画が相次ぎ、五輪後には供給過剰になる恐れがあると指摘。ただ大会期間中の8月に限っては最大2万2千室が不足するとの試算も示し、一時的な需要増を吸収する調整弁として民泊の有効性を指摘した。  民泊物件の紹介サイトを運営する米エアビーアンドビーによると、16年リオデジャネイロ五輪では、同市への旅行者50万人の17%に当たる8万5千人が民泊を使った。観光庁が17年7〜9月に実施した訪日客アンケートでも、12%が民泊利用者だった。  レスリングなどの会場となる千葉市は、民泊の普及を東京五輪に向けた施策の一つと位置付ける。担当者は「五輪が終わっても、国際交流や長期滞在を楽しみたい外国人の需要はある。千葉の魅力を伝える観光コンテンツの一つにしたい」と話している。 【営業届け出5,397件】  観光庁によると、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく都道府県などへの民泊営業の届け出は5,397件(6日時点)と徐々に増えている。一方、無届けのヤミ物件は根絶に至っておらず、予約仲介業者に徹底排除を促すなど対策を強めている。  届け出は新法施行前から受け付けており、6月8日時点では2,707件だった。1カ月間で倍増したが、施行前に大手予約サイトで約5万5,000件が紹介されていたのに比べると低調だ。

静岡 2018年07月15日朝刊

 

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