増加が問題となっている所有者不明の土地を、公園、直売所など公益性がある事業に有効活用できるようにする新法案が23日、判明した。土地の使用期間は「10年を限度とする」と明記。計画通りに事業を行っていない悪質業者に対し、都道府県知事が土地の原状回復を命令したり、懲役刑を科したりできるようにした。政府、与党の調整を経て今国会に提出し、来年夏ごろの全面施行を目指す。
新法案によると、市町村や企業、NPOなどが、都道府県知事に土地利用に関する事業計画を申請し、公益性が認められれば、最長10年間の使用権を設定する。所有者が現れて明け渡しを求められなければ延長もできるとした。
事業者が土地の使用を開始する際に、賃料相当額を補償金として法務局に供託。原状回復が容易な仮設の保育所や広場、農産物直売所などへの活用を想定している。
知事は事業者に土地の使用状況を報告させるほか、現地や事務所を立ち入り検査できる。計画通りに事業を行っていない業者に対し、土地の使用を停止し、原状回復を命じることも可能とする。従わない場合は1年以下の懲役か30万円以下の罰金。虚偽報告や検査を妨害した業者にも30万円以下の罰金を科す。
また、公共事業を進めやすくするため、国や地方自治体が所有者不明地を取得する際の手続きを簡素化する。
【所有者不明の土地】
所有者が亡くなった後に相続登記が行われず、現在の持ち主が分からなくなっている宅地や山林、農地など。
土地を引き継ぐはずの人が固定資産税などの負担を避けるため、登記手続きを敬遠している事例が多いとされる。長期間にわたり放置されることで公共事業の用地取得の妨げになったり、不法投棄や景観悪化を招いたりする例もある。全国で約410万haとする民間団体の推計もある。
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