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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

老後の生活基盤保護 相続 民法改正案

 相続分野では1980年以来の見直しとなる民法改正の要綱案が16日、まとまった。住み慣れた家を出ていかなくても済む「居住権」を新設するなど、法律婚の配偶者に手厚い内容。 背景には高齢化社会の進展のほか、婚外子の相続格差を違憲とした最高裁決定に対する政界からの反発があるが、関係者から異論や懸念も出ている。  最高裁は2013年9月の決定で、結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を、法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分としていた民法規定を違憲と判断した。  これを受け、規定を削除する改正民法が同12月に成立したが、自民党の一部から「家族制度が壊れる」との意見が上がり、法務省は法律婚の配偶者優遇の検討を開始。15年、当時も法相だった上川陽子氏が法制審議会に諮問した。  法制審の議論で焦点になったのは高齢配偶者の家と生活資金。法定相続分は遺産の2分の1で、評価額が高い自宅を相続した場合、残る遺産の分割で得られる預貯金などが少額にとどまり、生活費が不足した上、結局自宅も手放さなければならなくなる恐れがある。  要綱案では居住権を新設。家の土地・建物の評価額の一部だけを相続する形にして、他の遺産をより多く相続できる仕組みを考案した。  現行でも、後で返還する約束をした上で家を無償で借りる「使用貸借」という制度があるが、売却などで所有者が変わると、住み続けられない。居住権を設定すれば、所有者が変わっても住むことが可能だ。  居住権は相続されないため、配偶者が居住権、子どもが所有権を取得すれば、配偶者が亡くなった後は、子どもが制限のない所有権を取得できる。子どものいる高齢者同士の再婚も珍しくなく、血のつながらない配偶者と子どもの争いを防ぐ効果も期待できそうだ。  早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「平均寿命が長くなり、高齢配偶者の保護は喫緊の課題で、変化に耐えうる法律が必要だった。要綱案は、全般的にバランスの取れた内容になっているのではないか」と評価する。  一方で懸念もある。居住権は終身もしくは一定期間認められるが、法制審委員からは議論の中で「長期の居住権を設定した場合、元々の家全体の評価額とそれほど変わらない価値にまで上がってしまうのではないか」と心配する声が出た。 家の評価額は場所や築年数などによってさまざまで、必ずしも法制審の狙い通りになるとは限らない。  要綱案には婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、配偶者が生前贈与などで与えられた家は、遺産分割の計算から除外する制度も盛り込まれた。  昨年の意見公募では「配偶者の居住権保護という政策的配慮に合致するものだ」(第一東京弁護士会)、「法律婚の配偶者だけを優遇する理由はない」(神奈川県弁護士会)と、各地の弁護士会の賛否は分かれた。最高裁からは「婚姻と離婚を繰り返した場合など、20年の算定方法が明確でない」といった意見もあったという。  立命館大の二宮周平教授(家族法)は「高齢者の再婚では、子どもの反対で事実婚を選ぶ人も多い。居住の必要性は誰にでもあり、同性婚などさまざまな家族の在り方がある中、本当に妥当な制度だろうか」と指摘した。

中日 2018年01月17日朝刊

 

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