日本経済新聞は全国814市区の首長に対してアンケートを実施した。人口減少や新技術の登場など自治体を取り巻く環境が変化するなか、課題への対処法などを聞く総合的な調査。家や車などを貸し借りする「シェア経済」については26%が導入・検討と回答し、空き家問題については十分に対応が進んでいないことがわかった。主な調査結果を紹介する。
国が5年に1度、市区町村別に調査する空き家率。最新結果がでた後の2014年以降の空き家率を尋ねたところ、「把握している」と答えたのは30%だった。国は一部のサンプルから推計しているだけで実態把握には独自の調査が不可欠といえる。「その他」を選択した自治体のなかには「危険な空き家は把握している」という事例もあったが、情報収集には課題があるようだ。
鹿児島県奄美市は2017年10月、空き家が倒壊して公道などをふさぐ事故が相次ぎ発生した。「めったに起こることじゃないので1カ月間に2件は驚いた」と担当者。空き家が把握できていないため、同様の事故の不安はあるが、市内の住宅を一軒一軒調べるのは「人手不足で手が回らない」という。
空き家を登録して流通を促す「空き家バンク」は全体の7割が設置済み
か設置予定だった。空き家の改修・活用を財政面から後押しする制度も6割が導入済みか導入予定だ。ただ、空き家バンクについては物件が集まらないなど課題も多い。
空き家問題の先には解決がより困難とみられる所有者不明土地問題が待ち受ける。所有者不明土地の箇所数や面積を把握しているかを尋ねたところ、8割が「把握していない」と答えた。「把握している」は1割に満たなかった。
危険な空き家の解体や所有者不明土地の利用には財産権の問題がある。
調査でこうした問題を解決するために財産権を規制することについて聞いたところ、「公的な利用に限って規制すべきだ」が37%、「民間が利用する場合も含めて広く規制すべきだ」は10%だった。
最も多いのは「わからない・その他」の45%だった。不動産登記制度の見直しや国レベルでのルール化を求める声が多かった。
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