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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

国内不動産に海外マネー 取得額1.1兆円 3年ぶり最高

 海外投資家が日本での不動産購入を加速している。2017年の海外勢の取得額は1兆1,000億円と前年の約3倍に増え、3年ぶりに最高を更新した。投資マネーの流入で世界主要都市で不動産価格が上昇する中、日本は借入金利を勘案した不動産の投資利回りが相対的に高いためだ。海外マネーの流入は不動産市況に追い風だが、日銀のマイナス金利政策が後押しした側面も大きく、危うさを指摘する声もある。  みずほ信託銀行系の都市未来総合研究所が企業や機関投資家による17年の不動産取引の公表データを集計した。海外勢による購入額はデータを遡れる00年以降で最高だった14年(9,872億円)を超え、初めて1兆円台に乗せた。取得額全体に占める海外勢の比率は過去最高の24%に達した。  17年は1件あたり500億円を超える大型取引が目立つ。世界最大級の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金は昨年12月、東急不動産と共同で東京の表参道・原宿地区にある商業ビル5棟を一括購入した。売り手は香港の不動産ファンドで取得金額は計1,325億円。ノルウェー年金基金がアジアの不動産に投資するのは初となる。  同基金は原油販売収入から得た100兆円超の資金を世界で運用し、運用資産の5%を不動産に振り向ける方針。東京には15年にオフィスを構え投資先を探してきた。  不動産運用部門ノルウェー・バンク・リアル・エステートのカーステン・カレビッグ最高経営責任者は「東京の不動産市場は世界有数の規模で経済成長も見込める。今後も投資を続けたい」と話す。  シンガポール政府系ファンドのシンガポール政府投資公社(GIC)も昨年12月、東京・新宿駅前のオフィスビル、新宿マインズタワー(東京・渋谷)の43%の持ち分を大和証券グループ本社系の不動産投資信託(REIT)から625億円で取得すると発表した。  海外勢による日本の不動産取得が拡大したのは13年前後から。金融緩和で不動産市況が上向いたのを機にリーマン危機後に安値で買収されていた物件の利益確定売りが広がり、主に海外勢がその受け皿となった。ただ15年以降は売りに出される物件が減り、取引全体は低調になっていた。  昨年再び売買が活発になったのは、18年以降の東京都心のオフィス大量供給などでビル賃料が弱含むとの見方からオーナーの一角が売却に動いたからだ。米不動産サービス、ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)の赤城威志リサーチ事業部長は「海外勢はなお先行きに強気で高値でも取得に踏み切った」とみる。  もっとも日本の不動産価格は過熱感が漂う。不動産サービスのCBREによると、賃料収入を取得価格で割った投資利回りは東京・大手町のオフィスで3.55%。03年の調査開始以来で最低水準だ。GICによる投資案件の利回りは3%台半ば、ノルウェー年金基金は2%台と推測される。  それでも購入に突き進む理由が日本の超低金利だ。投資利回りが低くても購入資金を調達する際の借入金利がさらに低ければ収益は得られる。JLLによると、東京の高級オフィスビルの投資利回りから長期金利を引いた利回り差は2.8%。 2%台前半のロンドン、1%台のニューヨークや香港に比べて大きい。  マイナス金利は日本の不動産に海外マネーを呼び込み、市況を押し上げた。ただ米国などで利上げを機に売りに出る物件が増えれば「投資対象の多い他国に資金が振り向けられ、日本は取り残される可能性がある」(米クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの鈴木英晃ディレクター)。海外マネーが過熱気味の市況を押し上げ続けるかどうかは不透明だ。

日経 2018年01月07日朝刊

 

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