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ビル賃料、満室でも下落? 不動産各社に危機感

 2018年の大量供給を控えて、東京都心部のオフィスビル市況に異変が生じている。空室は少なく、ほぼ満室状態が続いているにもかかわらず、賃料は弱含み始めた。供給の増加で賃料が今後下落するとの懸念が高まっているためだ。危機感を強めた不動産各社は営業強化や新しいビルの建設、テナントの囲い込みに知恵を絞っている。「空室率をみると、賃料はもっと高くなるはず」ー−。不動産サービス大手、三幸エステー卜(東京・中央)の今関豊和チーフアナリストは賃料動向の変化を指摘する。オフィス仲介大手、三鬼商事(東京・中央)によると、3月末の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は3.60%。需給均衡の目安は5%とされ、3%台は極めて空きが少ない状況だ。  一方で、賃料は下落の兆しが出ている。三幸エステー卜とニッセイ基礎研究所によると、どの価格水準で成約したかを示す「成約賃料」は、延べ床面積3万3,000u以上などの条件を満たす大型ビル(東京都心部)で16年10〜12月期は3.3uあたり3万3,785円。15年7〜9月期をピークに緩やかな下落基調が続く。 ■ 移転控える動き  足元の空室率はおおむね08年以来の低水準だが、賃料水準は08年時点で4万円台と現在の水準と比べても高く、当時は上昇基調が続いていた。  なぜ賃料が上がらないのか。将来の需給動向への不安が高まっているためだ。リーマン・ショック前の07年と比べると東京の大規模ビルのストックは2割増え、膨らむ需要に対応してきたが、18年の大量供給を見越して移転を手控える動きが出始めている。  都心部ではビルの建設ラッシュが続き、一層の供給増が見込まれる。18年の東京23区の大規模ビル(1フロア660u以上)新規供給量は86万1,960u(三幸エステート調べ)。16年と比べると34%増加し、6年ぶりの高水準となる見通しだ。  直近10年を平均した東京23区の大規模ビルの新規需要はおよそ55万uにとどまり、需給ギャップの拡大につながる。大型ビルが増えてきたのは00年代前半。容積率の緩和などにより、大型ビルが建てやすくなった。19年の供給も約70万uと予想されており、日本大学の清水千弘教授は「大型ビルの供給は今後も高水準が続く」と指摘する。  企業の従業員数が減っている構造的な問題も賃料の不透明感を高めている。財務省の法人企業統計によると、16年12月末の従業員数は3,345万人。直近のピークである11年6月末と比べると1割少ない。  政府が音頭をとる働き方改革の動向も今後のオフィス市況に影響しそうだ。ドイツ証券の大谷洋司シニアアナリストは「テレワークや、自分の机を持たないフリーアドレスが増えればオフィス需要の減少につながる」と指摘する。 ■ 新規の獲得急ぐ  不動産会社は危機感を強めている。住友不動産は「2〜3年先を見据えて、優良テナントを早めに押さえる必要がある」(山下竜弥ビル営業部長)と判断、新築ビルのテナントを獲得する営業部門の人数を35人と、16年3月時点と比ベ3割増やした。企業と時間をかけて関係を構築、顧客開拓につなげる。  空室率が本格的に上昇する前に、需要獲得に向けた取り組みも進む。  2月に完成した大手町パークビルディング(千代田区)。災害対応といった最新設備に加え、部署を集約しやすい1フロアの広さや、レイアウト変更しやすい利便性の高さも売りだ。同月の記者会見でビル建設を手がけた三菱地所の杉山博孝社長(現会長)は「オフィスのショールームにしたかった」と述べた。  ビル内には国内では珍しいサービスアパートメントも設けた。想定される利用料金は月額90万円超。乾燥機付き洗濯機、キッチンにオーブンなどをそろえたサービスアパートメントを設け、外資系企業などの多彩な要望に応える狙いだ。  復合要因が重なり、将来の需給ギャップの回避に向けた道筋が見えないオフィスビル市場。賃料の動向は、こうした状況を敏感に反映している。

日経 2017年04月20日朝刊

 

※ニュースファイルは、新聞各紙に掲載された地域開発関連記事、土地対策や税制など主だったものを日付順に整理したものです。
※転載した記事の末尾には、新聞紙名および日付(朝夕刊の別)等の出典を明示しています。


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