国土交通省は18日、静岡県の2025年の公示地価(1月1日時点)を発表した。全用途の前年比平均変動率は17年ぶりに上昇に転じた。住宅地が17年ぶりに下落を脱した。商業地は2年連続プラス。ともに静岡市や熱海市の中心部が伸びた。新型コロナウイルス禍を経て中心市街地は上向くが、過疎地や沿岸部は下落が続く。
県内の調査対象は松崎町、西伊豆町、川根本町を除く661地点。住宅地(457地点)のうち170地点、商業地(162地点)では86地点、工業地(42地点)は31地点が上昇した。住宅地、商業地、工業地のいずれも前年より上昇地点数が増えた。
県内全体の全用途平均は0.2%上昇の1平方mあたり8万9,800円。用途別では住宅地が7万2,000円で横ばいだった。商業地が0.6%上昇の15万100円、工業地が0.8%上昇の5万300円だった。工業地は3年連続でプラスだった。
住宅地で上昇率が最も高かった地点は静岡市葵区音羽町だった。静岡鉄道新静岡駅に直結する大型商業施設「新静岡セノバ」から徒歩10分程度と市中心部にも近い。前年まで3年連続で首位だった静岡市葵区西草深町は4位となった。
西草深町は学校が集まるなど居住環境が整い、市内でも高級住宅地として知られる。不動産鑑定士の芝口直樹氏は「音羽町は利便性優位のエリアだが西草深町と同じ水準で取引される事例もあり住宅地としての地位が向上してきた」とみる。2位は熱海市春日町、3位は静岡市葵区安東が占めた。
商業地は2ケタ上昇の地点が増えた。熱海市銀座町は観光客の回復もあり上昇率16.5%と最も高かった。温泉街のほか相模湾に面した砂浜のサンビーチや親水公園といった観光スポットも近く、ホテルの開業も計画される。新静岡セノバ周辺の静岡市葵区鷹匠も11.4%と前年の6.8%を4.6ポイント上回った。
工業地は高速道路インターチェンジ(IC)周辺の好立地地点を中心に上昇した。上昇率首位は浜松市の浜松西IC付近の物流施設などが集まる地点などで、前年を上回る2.6%だった。
最高価格地点は住宅地がJR東静岡駅付近のマンション用地である静岡市駿河区曲金で1平方mあたり35万1,000円、商業地が静岡市葵区呉服町の同147万円だった。
市町ごとの平均変動率で上昇率が最も高いのは熱海市(4.7%)で、東海道新幹線が停車するJR三島駅に近く人口を伸ばす長泉町(1.2%)が続いた。下落幅は東伊豆町がマイナス1.9%で、伊豆の国市と伊豆市(いずれもマイナス1.7%)が続いた。災害リスクが懸念される沿岸部や過疎化が進む伊豆地域などはなお下落傾向にある。
日銀の金融政策の転換による利上げの動きが地価の先行きに与える影響について、芝口氏は引き続き低金利環境で現状影響は出ていないと指摘しつつ「利上げが続けば不動産需要にとってはマイナスなので注視する必要がある」と話す。
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