木材・セメント・鉄鋼 建設資材、高止まり 工事停滞でも原燃料高 今年前半
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鉄鋼や木材、セメントといった建設用資材の価格が2025年前半も高止まりしそうだ。建設市場の低迷で需要は振るわないが、原燃料相場や物流・人件費の上昇を理由に木材やセメントのメーカーは値上げ姿勢だ。鉄鋼価格も足元で下落基調が緩やかになった。建設コストは当面下がらず、マンションや戸建て住宅も高値圏が続く公算が大きい。
日本経済新聞は素材メーカーや商社に価格動向を四半期ごとに聞き取って見通しをまとめている。鉄鋼や木材、化学製品など主要な産業資材12品目のうち、25年1〜3月に上昇が見込まれるのが、木造住宅の壁や床に使う国産針葉樹合板の流通価格だ。主要な合板メーカーが1月出荷分から販売価格を5〜7%程度上げることを表明している。
合板はメーカー値上げに伴い24年前半に値上がりしたが、住宅価格の上昇を背景に新規着工が振るわず、年後半に反落していた。メーカーは生産調整を続けて供給を絞っている。ここにきて原料の丸太やトラック運賃などの上昇で採算が悪化していることを理由に、プレカット会社や流通会社への値上げ姿勢を再び強めている。
鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションなどで使う生コンの原料になるセメントの1〜3月の流通価格は10〜12月から横ばいとなる見通し。ただ、太平洋セメントなどのメーカーは4月出荷分からの値上げを表明し、生コン業界と交渉している。新型コロナウイルス禍で高騰した燃料の石炭価格を転嫁してセメントは過去最高値にあるが、円安基調で石炭の輸入負担はなお重く、さらなる転嫁を求める。
24年10〜12月に下落した鉄鋼は、1〜3月は下げ基調が和らぐとみられる。
じり安基調がなお続いているのは、RC造の鉄筋になる異形棒鋼だ。指標品種の直径16mm品は、ゼネコンなどの大口需要家に販売する価格が東京地区で1トン11万2,500円前後と24年末に比ベ2%下がった。
人手不足で中小規模を中心にマンション建築工事が停滞しており、異形棒鋼は需要低迷が続いている。加えて足元では「主原料である鉄スクラップの相場が軟調で、メーカーヘの値下げ圧力が強まった」(鉄鋼商社)という。
もっとも、ある電炉の鉄鋼メーカーの担当者は「電気代や人件費などのコストが高止まりしており、採算を考えるとこれ以上値下げできない」と話す。
異形棒鋼最大手の共英製鋼は14日、1月度の価格を前月比で1トン3,000円(約3%)値上げすると発表した。合同製鉄と朝日工業の共同販売会社である関東デーバースチール(東京・千代田)は24年12月、じり安傾向にある販売価格の「値戻しに取り組む」と表明している。
オフィスビルなど鉄骨造の梁(はり)や柱に使うH形鋼は商社や問屋が仕入れを抑制して在庫水準を抑えている。建設向け需要の回復はまだ見通せないが、供給調整が相場を下支えしている面があり、1〜3月の価格は横ばいとなりそうだ。
水栓金具などに使われる黄銅丸棒も需要は厳しい局面が続くが、国際銅相場や外国為替市場の円安基調が価格を下支えする見通し。化学はポリエチレンやポリプロピレンが原料の国産ナフサの下落基調を受けて値下がりしそうな一方、建設用途の多い塩化ビニール樹脂は物流費などの転嫁が終わったばかりで横ばいが見込まれる。
建設資材が大きく値下がりしない以上、マンションや戸建て住宅を建てるコストは高止まりしそうだ。建設物価調査会(東京・中央)が資材費や人件費を集計して算出する建築費指数は、マンション(RC造)やオフィスビル(鉄骨造)、住宅(木造)など主要な項目で24年12月に最高値をつけた。
10〜12月は幅広い資材の値下がりを人件費の高騰が帳消しし、建築費を大きく押し下げるにはいたらなかった。「鉄筋や型枠の組み立て作業のほか電気機器の設置など幅広い工程で人手が足りず、労務費が上がっている」(建設物価調査会)という。
「2024年問題」を起点とする建設・運輸業界の人手不足は25年も変わっていない。資材価格の高止まりと人件費上昇が続き、マンションなどの価格にとっては「ダブルパンチ」の様相だ。
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日経 2025年01月28日朝刊
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※ニュースファイルは、新聞各紙に掲載された地域開発関連記事、土地対策や税制など主だったものを日付順に整理したものです。
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