首都圏の中古マンションの平均価格が2024年に下落した。前年を下回るのは11年ぶりだ。東京都外で価格が高くなりすぎた結果、実需層が離れている。埼玉などの周辺県では「3,000万円の壁」が立ちはだかる。実質賃金が上がらない中で、住宅ローン金利の上昇も懸念材料となり購入が鈍い。都心部でも物件を見極める目が厳しくなっており、25年は中古市場の勢いが後退する可能性がある。
不動産調査会社、東京カンテイ(東京・品川)が23日発表した24年の中古マンションの平均希望売り出し価格は70平方m換算で4,747万円となり、23年比1.1%安となった。大胆な金融緩和などを掲げたアベノミクスによって不動産市況が底入れをみせた13年以来の下落となった。
中古物件は、マンショ ン市場の9割を占める。建設コストやデベロッパーの販管費などが上乗せされる新築物件とは異なり、マーケットの需給を反映しやすい。
24年は埼玉、千葉、神奈川の3県で価格が下落した。3県はこれまで都内の価格高騰に引っ張られる形で、値上がりしてきた。ただ、高くても売れる都心部と比べて、周辺県では3,000万円が壁として意識される。埼玉は23年に前年比4.0%高の3,020万円となり3,000万円を上回ったが24年には2,909万円に押し返された。千葉では3,000万円の手前の価格帯が続く。神奈川は3,000万円台後半だが横ばいの展開が続いた。
周辺県は都心部と比べて相対的に所得が低い一般の実需層がメインとなる。東京カンテイの高橋雅之・上席主任研究員は「実質賃金が上がらず、金利負担も増して住宅の購入マインドが冷めている」と説明する。
売れ残って市場で滞留している在庫物件は増加傾向だ。東日本不動産流通機構(東京・千代田)のデータによると、3県の中古マンションの在庫は24年12月時点で2万1,754件で前年比5%増えた。売り出し後に価格を下げる物件も目立つ。
東京23区は24年の平均希望売り出し価格が前年比9.4%高の7,720万円だった。中心部の千代田区や港区では足元の24年12月時点で2億円に迫っている。
中古「億ション」が大量に供給される都心部では、会社経営者や海外投資家など資金力が豊富な購入層が多い。
金利の上昇が見込まれる中で、25年も周辺県で市況は軟調に推移しそう。都心部でも「物件を選別する目が厳しくなっている」と外国人向けに物件を仲介するハウジング・ジャパン(東京・港)の橋本光央代表取締役は説明する。
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