不動産経済研究所(東京・新宿)は24日、2025年の首都圏の新築マンション供給戸数が前年比13%増の2万6,000戸程度になるとの予測を発表した。4年ぶりの供給増だが、需給逼迫が解消される見込みは小さい。都心で「億ション」が常態化するなか、土地を所有しない代わりに相場より割安な定期借地権付きの物件が増えている。
大型物件が販売されるなどの要因で25年は供給数が増える。もっとも足元は物件が少ない。24年の供給戸数は前年比14.4%減の2万3,000戸の見込み。1973年の調査開始以来最低の水準だ。需給が逼迫するなか、24年1〜11月の東京23区の販売価格は1億1,285万円と、23年通年に続き1億円を超えた。
25年も都心での供給が多く価格は高止まりしそうだ。23区に建つ新築マンションの平均価格は過去5年で約6割上昇している。それでも需要が衰える気配はない。
戸数が限られ、価格も上がるなか「定借マンション」に注目が集まっている。借地期間の満了時に更地にして土地を返却する必要があるが、物件価格が相場よりも2〜3割安く抑えられる。
企業などが土地を所有する定借マンションは好立地に物件を建てやすい。日鉄興和不動産が10月に販売を開始した「リビオシティ文京小石川」(東京・文京)は山手線内側という希少な立地だが、1期1次では3LDKで1億円を下回る部屋がある。そのため購入者は30歳代が全体の47%と最大勢力だ。総武線市川駅から徒歩7分に建つ三井不動産レジデンシャルなどの「リーフシティ市川ザ・タワー」(千葉県市川市)も販売好調だ。
不動産経済研究所の松田忠司・上席主任研究員は「地価上昇を受けて事業者が土地を手放さず、定借マンションが増えている」と話す。25年は定借マンションの供給が2,000戸を超える可能性があるという。
不動産コンサルティングを手掛けるリボンブレインズ(川崎市)によると、定借マンションの供給は年々増加しており、23年は12月末の時点で累計3万6,000戸を超えた。同社の澤地塔一郎社長は「借地期間は50年が多かったが近年は70年の物件が増えている。人生100年時代に対応している」と説明する。
定借マンションは価格が割安になる一方、売却で苦戦する例が多い。東京カンテイは23年のリポートで「中古市場で残りの借地期間が意識されて価格設定される」とし、築年数の経過につれ周辺相場を下回るケースが増えると指摘している。
それでも持ち家を求めるニーズは強い。今年、港区で定借マンションを購入した39歳の男性は「今を逃せば二度と家が買えなくなるかもしれないという危機感が背中を押した」と話す。
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