中古マンション相場の勢いに陰りがみえてきた。市況が軟調に傾いているのは福島県や愛知県など全国15県と1年前の3倍に増えた。金利の先高観や物価高などで購入意欲が鈍り、多くの地域で上昇相場の勢いが失われた。中古マンション市場は転機に差し掛かっている。
不動産調査会社、東京カンテイ(東京・品川)が47都道府県で家族向けの中古マンションについて、売り出し価格の動向を調査し、結果をとりまとめた。13カ月移動平均の変動率などを加味し、相場動向のトレンドを分析した。
仙台市宮城野区にある中古の高層マンション。夏場は3,000万円台前半だったファミリー向けの物件が数カ月ほどで、1割ほど引き下げられていた。角部屋の優良物件だが、買い手はまだつかない。
同区では2024年9月の平均希望売り出し価格が、専有面積70平万m換算で2,260万円だった。1年前と比べると4%下がっている。
東京カンテイの井出武上席主任研究員は「都内23区はまだ下がる心配はないが、全国でみると状況は違う」と語る。
9月は47都道府県のうち23都道府県が「やや上昇傾向」もしくは「上昇傾向」だった。前年同月から6減った。
一方で前年はゼロだった「下落傾向」が山形県や福島県、愛知県など8県に、「やや下落傾向」は宮城県や埼玉県など7県となり2増えた。横ばいで「足踏み」だったのは9。
堅調な東京都は、9月時点の平均売り出し価格が23区すべてで前年よりも上昇した。港区は2億375万円、中央区は1億4,090万円と、いずれも前年比42%高い。都区部の物件は海外投資家や富裕層が主な購入層で、別格の市場になっている。
これまで東京に引っ張られ、地方でも売り手が強気になり、価格を引き上げてきたが、市況の勢いは多くのエリアで息切れしている。
地方での中古マンション市場の変調は3つの要因が重なっている。第一に、東京都心と比べると所得水準が低く「相場が上昇しすぎた結果、地元の人たちの手が届く価格でなくなっている」(井出氏)点だ。価格が上がれば、地方では戸建てや新築マンションとも競合し、中古マンションの魅力は薄れる。
第二が物価高だ。中小企業に勤める人たちが多く、賃上げの恩恵を十分には得られていない。生活消費財の値段が上がり、資金的な余裕がなくなっているという。
最後が今後の金利動向だ。住宅ローン金利が上昇に向かう動きをみせており、住宅購入マインドに水を差しているという。
井出氏は「今後、中古マンション相場が下落基調になるエリアはさらに広がっていくだろう」と指摘する。
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