県内路線価、横ばい 上昇地点倍増 経済回復、再開発も期待 16年ぶりマイナス脱却
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国税庁が1日発表した2024年1月1日時点の路線価で、静岡県内の標準宅地は前年比で横ばいとなり15年続いた下落を脱した。新型コロナウイルス禍を経て人流や経済活動が回復するほか、地域により再開発への期待も高まった。上昇地点数は倍増した。一方で交通が不便な過疎地は減少に歯止めがかからず濃淡がみられる。
路線価は相続税や贈与税の算定基準となり、主要道路に面した1平方m当たりの標準価格を示す。標準宅地とは建物の敷地になる土地を指し、住宅地のほか商業地や工業地を含む。
県内では静岡市葵区紺屋町(紺屋町名店街呉服町通り)が115万円と最も高かった。都道府県庁所在地の最高路線価としては全国16位。新型コロナウイルス禍が落ち着き商業地としてにぎわいが戻ってきたこともあり、前年と比べた変動率は横ばいから0.9%上昇に転じた。
県内13税務署ごとの最高路線価を記録した地点を前年と比べると、6地点で上昇し、横ばいが6地点、下落が1地点だった。23年は上昇が3地点、横ばいが8地点、下落が2地点あり、上昇地点数が倍増している。
県東部では熱海市田原本町(平和通り)が33万円で最も高く、前年比も10.0%上昇して県内各税務署の最高路線価では唯一2桁の伸びを示した。不動産鑑定士の木村満義氏は「にぎわいを完全に取り戻している。現在もホテルの新規開業が続いており、今後の熱海のポテンシャルヘの期待で様々な(用地の)需要が見られる」とする。
三島市は最高路線価が26万5,000円で沼津市を上回り県内4位だった。対象地点はJR三島駅南口。上場企業の拠点があるほか、タワーマンションを中心とした駅前再開発、東海道新幹線での東京への行き来しやすさなどから1.9%上昇した。
静岡市清水区のJR草薙駅前は静岡銀行が本部を置き、人通りが多くエリアが狭いことから地価が上昇傾向という。浜松市中央区和田町(国道152号通り)も会員制量販店「コストコ」などの商業施設が付近に集まり、車での移動に便利なこともあって4.8%上昇した。
一方、最高路線価が1.2%下落した島田市は「郊外の商業施設に客足が流れ、中心商業地の空洞化で地価は下落基調」(木村氏)。23年の4.2%下落から今回は横ばいとなった富士市は「駅前再開発への期待もあり、郊外流出で下落を続けていた地価が徐々に収まりを見せている」(同)とする。人口減少が深刻な下田市は横ばいだった。
木村氏は「半導体工場が進出する熊本や北海道と比べて静岡の地価上昇率は低く、新幹線開通や新駅など起爆となるようなものが少ない」と指摘する。今後の路線価の動向については「建設費の高騰が地価に与える影響は調査が必要。上昇してきた地域では鈍化する可能性もあるが下がる見方は多くない」とみる。
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日経 2024年07月02日朝刊
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※ニュースファイルは、新聞各紙に掲載された地域開発関連記事、土地対策や税制など主だったものを日付順に整理したものです。
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