日銀、マイナス金利解除 県内金融機関、相次ぎ評価 製造業、為替の動向注視
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日銀は19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めたことを受け、静岡県内の金融機関からは金融政策の正常化を評価する声が聞かれた。「金利のある世界」が戻ってくれば、住宅ローンや債券利払いにも影響する。県内の製造業は為替への影響を注視している。
しずおかフィナンシャルグループ(FG)傘下の静岡銀行の八木稔頭取は、日銀の決定について「本来あるべき正常な金融システムに回帰することは時宜を得た決定」と受け止める。日銀のマイナス金利政策で利ざやが縮小し、地銀は収益確保に苦しんできた。政策金利に連動する融資金利が上昇すれば、貸出利息の伸びが期待できる。
原材料高や人手不足で県内経済の先行きは「まだ楽観できるものではない」(八木頭取)。同FGではマイナス金利政策下で、企業向けのコンサルティング業や環境対応、新興企業向けの出資・融資など収益基盤を広げてきた。こうしたサービスを通じ、顧客のニーズ変化に対応する構えだ。
県内の信用金庫最大手の浜松いわた信用金庫(浜松市)も、3月解除は「おおむね想定内」としたうえで「デフレ脱却・金融政策の正常化への第一歩として、景気への好循環を期待したい」としている。現時点で急激な利上げは想定しておらず「直ちに取引先や地域経済へ与える影響は限定的」とみる。
政策金利が上昇すれば、住宅ローンの金利も上昇する可能性が高まる。住宅購入者には負担増となり、不動産市況への下押し圧力となりうる。ある県内金融機関の関係者は、変動型の住宅ローンを念頭に「メガバンクや他の県内金融機関の動向を見ながら今後決めていく」と話す。
今後は自治体が新規発行する債券の利払い負担が増える可能性もある。静岡県の担当者は「投資家への丁寧な説明とバランスのよい起債をさらに進める」と語る。浜松市は「金利上昇は市債の借り入れに対する影響も大きい。今まで以上により低利な借り入れ実現と安定した資金調達に努める必要がある」としている。
県内には西部の自動車関連など製造業が集積する。マイナス金利政策の解除が為替市場に及ぼす影響について、ヤマハは「一般論として金利が上昇し、円高となればマイナス影響も想定される。今後の為替動向が気になる」とコメント。スター精密は「今期の業績予想で円高方向に振れることは織り込み済み」(佐藤誠悟上席執行役員)という。
自動車部品や工作機械を手掛ける県内企業は「中長期で金利上昇のリスクがある。為替レートが円高に振れれば、輸出にはマイナスだ」と警戒する。
県商工会議所連合会の岸田裕之会長(静岡ガス会長)は「当面は緩和的な金融環境が続くと想定されるため、急激な金利上昇や円高が進む可能性は低い」としたうえで、「金融政策には慎重な対応を期待したい」とコメントした。
浜松商工会議所の斉藤薫会頭は政府や日銀に対し「今後の金利や為替動向を注視し、中小企業支援のための迅速かつ適切な支援策を講じるようお願いしたい」としている。
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日経 2024年03月20日朝刊
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※ニュースファイルは、新聞各紙に掲載された地域開発関連記事、土地対策や税制など主だったものを日付順に整理したものです。
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